一本釣り漁師の真鯛釣り
真鯛の習性
[ 豊後水道で一本釣り漁師より資料収集]



 この資料は、豊後水道西部の四浦半島周辺に於いて、一本釣りを生業としている多くの漁師の方より集めた、一連の真鯛に関する習性を記したものです。
 これら、全ての編集物は漁師が栄枯より受け継いだ狩漁技に、筆者の釣り経験と偏見性を加味して作成しました。学術書などの記述とは、かけ離れたものかも知れません。尚、文筆未熟なので重複した点や変換ミスなど、読みづらい面が多々あるのはご容赦下さい。

 同時に別項目として、漁法・餌・仕掛け・釣技等を筆者の経験を加味して実践し、「真鯛の習性」「鯛釣りの方法」「てんや釣り」「ふかせ釣り」[エバ鯛釣り]「食わせ真鯛釣り」「イカ鯛釣り」「むし鯛釣り」「チダイ釣り」「アマダイ釣り」等に分類して文書にしております。




真鯛 は何処(どこ)に居る
一本釣り漁師は 「真鯛程多い魚は他に無い 一年中海いっぱい何処にでも居る」 と言う。


真鯛の生息域
 中真鯛や大真鯛は混在しているだけではない。その生息域は広く、沿岸域の藻場から沖合い本流域の200mを越す深海にまで及ぶ。尚、手の平クラスの幼真鯛や小鯛は、キス等の居る浅い砂泥地や沿岸の藻場にも多い。又、数sを越すような大真鯛でも、浅い藻場を単独で回遊することも多く、素潜り漁師の目撃談は数限りなく多い。
 特に、潮流の当たる島礁際や、海底に沈み瀬や沈船、漁礁付近も真鯛の餌場となっており、多くの真鯛やチダイが居着いている。又、豊後水道本流域では、起伏の激しい海底や深い海中から立ち上がった尾根付近も真鯛の絶好の附き場となる。このようなポイントに潮流が当たると、地域や部分的に潮流が速くなったり湧き揚がるなど複雑な流れとなり、真鯛が餌にするイワシ類の他、甲殻類やイカ類が寄るからに他ならない。
 湧昇流が発生すると、海底からの豊富な栄養分を上層に運ぶからプランクトンが常時発生する。このプランクトンを求めて、シラスなどの各種の幼稚魚が寄るだけでなく、甲殻類や小魚群も多く流れて来る。
 これらに附けた真鯛やチダイは、海底から離れて小魚群直下の低層から中層にかけて浮上していることが多い。しかし、起伏の無い浅い砂泥地には真鯛の姿は少ないものだ。餌となる甲殻類やイカ類、小魚群が少ない上に、危険が迫った際に身を隠すような障害物が無いからであろうか? 唯一、アマダイ釣りをする際に、たまに混漁される程度である。
 小魚群が沈み瀬や漁礁等のポイントを離れた場合、{真鯛}や{チダイ}は、行動を共にすることは少ないが、大真鯛や中真鯛はカタクチイワシ等の小魚群が濃密群のまま低層を移動した際には、これらの小魚を食しながら、群に追随する動きをするのが特徴だ。
 豊後水道本流域に位置する、無垢島や高島、保戸島、水の子島近海には、急流域の海底に岩礁や沈み瀬、漁礁、沈船等が無数に点在し、真鯛は勿論のこと、ヒラメやブリ、ハマチ、イサキ等、大魚の絶好の付き場となっている。又、これらの島礁際は強い潮流に掘られ削られて水深100mを越す海溝状となっている。
 この深淵付近に点在する浅場{かけあがり}には、年間を通して各サイズの真鯛やチダイ・大アジ・イサキ・ヒラメ・ブリ等の魚影が濃い。
 これらのポイントには、速い潮流による湧昇流に乗って、アミやエビ等の甲殻類の他に小魚群が流れて来るだけでなく、通年各種のイカ類も多く来流し、餌として容易に補足されるからであろう。又、豊後水道には、特定の時季に各種のエビやアミ類の大発生する場所が点在しており、これを察知した真鯛・チダイ・ハマチ・サバ・大アジ・イサキなどが大挙して来流する。
 しかし、時季やポイントによって、真鯛やチダイが主体であったり、イサキの大群だけが群がって居たりして、各魚種が対等に混在することは無いようだ。
 冬季の大真鯛は、豊後水道本流域の80mから100mを超す海溝で、この時季に大量に来流するコブイカなどのイカ類を追う。[胴付き仕掛け]に活きたコブイカを掛けて狙うと、いい釣果を出す。
 ブリやカンパチ、ヒラマサ、大アジ、大サバ、イサキなどの大型魚が居附く沈み瀬や漁礁付近には、年間を通して大型や中型の真鯛が多く居るものだ。
 中真鯛、小真鯛やチダイは、食性や採餌行動がイサキの群と共通点があるから、イサキ群が居るポイントは、間違いなく各サイズの真鯛やチダイの一級ポイントである。このような時、大真鯛の姿が少ないのは、餌となる甲殻類やアミ類、各種の幼稚魚が小さく、大真鯛の食性と合致しないから。
 魚類養殖場の生け簀下は、養殖魚への投げ餌の「こぼれ餌」があるだけでなく、真鯛の好む甲殻類や小魚類、貝類も多い。又、生け簀が直射日射を遮り、ブロックアンカーを投錨してロープを縦横無尽に張っているから、これらが邪魔をして刺し網漁の操業もままならない。
 このように好条件が揃った上に、立体的な漁礁の状態なので、真鯛やぶり、イシダイ、チダイ等の絶好の棲家となっており、年間を通してその魚影は濃い。又、漁獲したカタクチイワシやアジなどの畜養生け簀下や定置網際も大中真鯛の好ポイントとなる。しかし、餌盗り上手な雑魚が多いのも否めない。


単独と群
 真鯛は、食する餌の発生や来流状態に併せて広範囲に単独行動したり、サイズの違う真鯛が寄り集まって群を形成することも多いが、他の魚のような濃密で巨大な群は形成しない。
 餌の多いポイントに寄り集まる感じの群なので、規模も小群れであったり、時には大きな群になるが、餌となる小魚群やイカ類の種類や大きさによって大真鯛中心の群であったり、中小真鯛が群れたりする。
 甲殻類やイワシ類が来流すると、付近に散在していた真鯛が寄り集まる感じで群れとなり、餌となる甲殻類やイワシ群を狙って中層まで浮上する。
 真鯛は、このように立体的にも広いエリアを採餌場としており、白身魚で、このような特異な採餌行動をする魚は他には見当たらない。


真鯛は底魚ではない
 魚群探知機に映る「浮上した真鯛群の映像」は、沈み瀬や漁礁が潮流を受けて湧昇流となる上流側の中層から低層にかけて確認されるのが常である。尚、潮流が1ノットを超すように速くなると、高さのない漁礁や海底丘陵付近では、速い潮流がそのまま流下して湧昇流が無くなるから、真鯛達は漁礁や丘陵の後方に発生する「回し込み潮」の位置に移動する。
 カラー魚探の画面には、低層から中層にかけて「ポツン・ポツン」と青い点の中に若干の白色などが点在する映像となって映るが、濃い真鯛の群は狭い範囲ではあるが「天の川の星空状態」の映像になっている。尚、時には極短い横引き線も現れるが、これは、同じ真鯛が連続して捕捉された映像だと思われる。
 チダイ群は、湧昇流の湧く沈み瀬や漁礁の上流側の、低層から中層にかけて確認されるのが常。真鯛群と比較すると濃密な大群で居ることが多く、このような映像が帯状であったり黄色や橙色が点在するのが特徴だ。


食サイクルについて
 豊後水道中西部における真鯛やブリ群等の大魚は、餌となるアミ類やエビなど甲殻類の大発生やカタクチイワシ、ウルメイワシ等の小魚群の来流や増減などの状況により、それらに附けて頻繁に移動する。
 豊後水道での食物連鎖の頂上はマイルカやハンドウイルカなどのイルカ群であるが、このイルカ群の動向には目が離せない。
 これは、プランクトンやアミなどが大発生すると、カタクチイワシやウルメイワシ・キビナゴなどの小魚の大群がこれに附ける。
 さらに、アジやイサキ、イカ等の群れが、これに寄り、小魚やイカ類が大好物のハマチや大中真鯛などが寄ることになる。
 イルカは、この近海では食物連鎖の頂上的存在であり、これら全ての魚を食するので、多い時には数十頭から数百もの大群をなして、餌となる魚類が霧散するまで長期間にわたり豪快に遊泳する。
 長期にわたり無垢島、高島周辺にイルカの大群が回遊するような時には、四浦半島等の内海の浅場には、この、イルカを警戒して逃避したイワシ群やアジ類だけでなく、これらの小魚群を狙ってハマチ、大真鯛などが大挙して来流することがある。
 一本釣り漁師は、この食サイクルによる一本釣り対象魚の動きを実に良く知っており、敏感に先取りして漁をする。
 漁師はこの状態を「イルカ回し」又は「イルカ食い」、「大魚回し」「大魚食い」などと表現する。
 カモメやウミネコ、アジサシ等の水鳥が「弧を画いて乱舞」する時も、ハマチや真鯛が多いと思った方がいい。
 カタクチイワシなど小魚の大群が居て、この小魚群を餌とするハマチやサワラ等の大型魚が海面まで追い上げて盛んに食しているからである。
 この位置が沈み瀬や漁礁近くであれば、イワシ群の下には、必ず大真鯛、中真鯛が群れていると判断していい。
 しかし、魚類の養殖場や巻き網船団の蓄養筏付近で乱舞する水鳥は例外であり、このカモメ等の水鳥は、生け簀内の小魚や養殖用の撒き餌を狙っている。


真鯛の食性
 真鯛は、動物性の餌であれば何でも食うと言っても過言ではない。「エビで鯛を釣る」のたとえがあるように、エビやシャコ等の甲殻類を最も好むことは間違いない。しかし、これに劣らずイソメ類や貝類の他、カタクチイワシ・イカナゴ・ウルメイワシ・キビナゴ・ヒイラギ等のイワシ類が大好物であり好んで食する。
 中真鯛や大型の真鯛はイカ類も大好物であり、スルメイカ・ケンサキイカ・ヤリイカ・シリヤケイカ・コブイカ等の群が流来すると、これらのイカの群に附けるので、イカ類は、大人の真鯛の主食であるのかも知れない。
 釣り揚げた真鯛が、生け簀内でイソギンチャクや蟹、ドンコ類等の他にアナゴ類の皮を吐き出した事例もあるので、これらも食しているのであろう。
 漁師の話では、急流域の岩礁地帯に居付いた5sを越すような大真鯛は貪欲に餌を食い、カニや貝類の他に、ネンブツダイ等の雑魚も盛んに食すると言う。
 時には釣り上げるアジを船際まで追って来る大真鯛が目視されることも珍しくはない。
 「いわし鯛釣り」の経験から推測すると、真鯛群は、エビや蟹等の甲殻類の他に、マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ・イカナゴ・キビナゴなどのイワシ類や各種の小魚群に附けて沈み瀬や漁礁間を移動するようだ。
 急流域の沈み瀬や漁礁、沈船、島礁近くの真鯛のポイント付近に、イワシ類の大群が居れば、これには必ず、大真鯛、中真鯛の他にサワラ・ハマチ・ブリ・ヒラメ等の大魚が附いている。
 近年では一本釣り漁師が、魚群探知機を駆使して真鯛ポイント付近で小魚群を探索し、その小魚をサビキに食わせ、これに大真鯛、中真鯛、ブリ等の大魚を食い付かせる「いわし鯛釣り」釣法を多用するようになった。
 魚群探知機の性能が良くなり、小魚群の捕捉が容易になって、短時間に多くの真鯛やヒラメ、ブリ等の高級魚が漁獲されるからだ。これは、典型的な近代漁法であり、遊漁者でも魚群探知機さえ設置すれば容易に追随できる大魚釣りの方法だと言えよう。
 中小の真鯛やチダイは、ゴカイ等のイソメ類やアミ類等も好んで食する。この他、真珠や魚類養殖場で、イシダイやチヌを釣る際に「ふかせ釣り」の撒き餌や付け餌としてカニやムール貝等を使用していると、大真鯛や中真鯛が釣れてくることも多い。

餌が居ないと真鯛などは居なくなる
 瀬戸内海の各県では、毎年大量に真鯛の稚魚を放流している。しかし、餌となるエビ等の甲殻類やイカ類、イワシ類の大群が居なければ成魚になれない。近年、カタクチイワシ、イカナゴ、ウルメイワシ、キビナゴなどのイワシ類がめっきり減少した。これに比例して大真鯛やヒラメ、アナゴ、ホゴ等の魚も激減しているのが現状だ。
 これは、イリコ漁師が電探や海中ソナーを駆使して、シラスの段階で巻き網や船曳き網で一網打尽に盗っているからである。この際、多量の幼小イカや各種の大魚の稚魚も、この網漁の犠牲となる。
 真鯛やハマチなどの大魚は、年間を通して餌となるカタクチイワシやウルメイワシ等の小魚群が居ることが生息の第一条件となる。「海中の米」でもある、これらの小魚を盗り過ぎて、生態系のバランスを壊しているのは明白だ。
 一本釣り漁師は確信して言う。3年でいい、イワシ類などの小魚を捕らねば、昔のように、何時でも何処でも大魚が釣れるようになる。と。
 釣りを趣味としている諸君、シラスやイリコ、釘煮等は決して買うでないぞ、食うでないぞ。イリコ(カタクチイワシ)や釘煮(イカナゴ)は真鯛やアジに喰わせようではないか。




真鯛の食事時
魚は腹が減ったから 餌を食うのではない。           漁師の格言
魚は潮時で釣れ。潮時とは餌を食う{ひととき}のことじゃー。 漁師の格言
 魚の食いの良し悪しは、魚の体内にある{採餌スイッチ}のON、OFFによるものであり、何かのきっかけで、この{採餌ONスイッチ}が入るのである。
 漁師によると、このきっかけとなる要因は、水温の変化、日差しの強弱、気圧、潮流の強弱(引力の強さ)、海水の塩分濃度と濁り度合いや成分、餌や天敵の有無などが考えられると言う。
 特に朝夕は、日差しの明暗と、夜行性、昼行性魚の活動の境界時なので、必ず、このスイッチが入る時間帯となる。
 真鯛も例外ではなく、{採餌スイッチ}の入った状態は、朝夕の「まずめ時」では、数十分程度が普通であり、長くても1時間程度だ。しかし日中でも干満の切り替わる前後には{採餌スイッチ}の入る時間帯があることも多い。
 豊後水道は海水の干満により、瀬戸内海へ日向灘の海水が大挙して出入りする。この潮流が島礁際や沈み瀬等の浅場にぶつかると渦や湧昇流が発生する。
 プランクトン、アミやエビ等の甲殻類が大発生し、潮流に押されて上層まで吹き上げられると、これらを餌とするカタクチイワシ等の小魚の大群が必ず寄ることになる。
 アミやエビ等の甲殻類やカタクチイワシなどの小魚類は各魚種共通の餌なので、渦や湧昇流が発生するポイントには、常に天然の撒き餌があることになる。
 {真鯛}や{チダイ}{イサキ}{サバ}{アジ}{ハマチ}等はこの位置で群れて餌を漁るから、この、湧昇流の発生する時間帯には、必ず{採餌スイッチ}が入り、湧昇流が収まるまで長時間釣れ続くのである。
 大潮時には豊後水道を大量の海水が通過するから、上記の状況が強く出て、魚の食い付きが抜群にいいことになる。このような時に仕掛けを投入すれば「入れ食い」状態となることが多い。
 しかし、平面的な漁礁や沈み瀬付近では、潮流が極く速くなると湧昇流が湧かず、通過流だけとなるから真鯛などは姿を消すことになる。
 だが、複雑に大きく立ち上がった「規模の大きい沈み瀬」や島礁際では渦や逆流現象がおきるから、このようなポイントで釣れ続くことになる。
 漁師はこのようなピンポイントを「潮隠れ場所」と称する。
 群泳する習性を持つイサキ・チダイ・メバルや、青魚のアジ・ハマチ等にはこの{採餌スイッチ}のON・OFFの徴候が強く出る。
 反面、単独行動するアマダイ・イトヨリ・ホゴ・べラ・カワハギ・アラ等の底魚は{採餌スイッチのON・OFF}の切替が弱く、常時多少の釣果はあがるものだ。
 真鯛は、この中間的な行動をする珍しい魚であり、単独行動をしたり、餌の多い時には群泳もする。採餌行動も中間的であるのもうなずける。
 一本釣り漁船は、漁をする時間帯に何処のポイントに湧昇流があって魚が釣れるか、ポイントでの潮流の強さと向きを予測して出漁する。
 魚の食いが立つ「日の出前」に漁場に着くように時間を逆算して、夜明け前の暗いうちに一斉に出港するのが常である。尚、早朝だけが真鯛の釣れる時間帯ではない。
 片潮(干き潮又は満ち潮)だけ湧昇流が発生して漁の見込めるポイントには、その片潮の時間帯に併せて船を出したり、他の漁場から転船して漁を行うことも多い。
 大漁が期待できない小潮時には出漁せず、漁船や漁具の手入れに専念することは常。これらの漁師の行動は{採餌スイッチのON・OFF}を予測し、先取りしての行動であって実に合理的である。
 群を形成する他の魚が大潮の朝夕だけに集中的に食いが立つのとは違い、真鯛は日中でも諸条件が整えば貪欲に餌を追い、小潮の晴天時に大釣れすることも珍しくはない。
 [ふかせ釣り]する場合の、真鯛の食いが立つ時間帯であるが、潮流が緩やかな沿岸部では、中真鯛や大真鯛は朝夕の「まずめ時」が最も食いがいい。
 午前と午後では、概、午前中の漁獲量が多いように思える。しかし、大潮時であれば、日中でも潮流が緩くなる「潮止まり前」と、逆の潮流が流れ始める「行き始め」に集中して釣れることが多い。

撒き餌は多く撒け、食えば食う程良く食うぞ(釣れるぞ)。漁師の格言
 真鯛の他、群を形成する魚は、撒き餌の効果などにより、魚に{採餌スイッチ}が入って採餌パニックになると、腹がパンパンに張るまで食い漁る。
 その反面、魚影が見えても1週間以上もの長期間、全く釣れない経験をしたことも数え切れない程多い。
 [ふかせ釣り]時には鯛を寄せる「撒き餌のエビ」を多く撒くことで釣果が増す。
 一般的に小型の真鯛やチダイは、小潮の時でも一日中'ぼつぼつ'は釣れるが、最も食いが立つ時は、大真鯛と同じ「大潮時の朝夕のまじめ時と潮変わし時」であり、小潮の潮変わし時は大潮時のように荒食いすることは少ない。
 潮が行き過ぎると食わん 潮変わしを狙え。
 起伏の少ない漁礁などでは、潮流が速くなると湧昇流がなくなってしまう。概、0.8ノットを超すと真鯛の映像は消え失せるようだ。
 尚、高低差の大きい沈み瀬や島礁際では、強い潮流時でも部分的に逆流現象である「さかま」や緩く流れる場所が出現する。
潮が澄んだら家で釣れ(仕掛け作り)、濁った潮に船を出せ。 漁師の格言

 魚類全般的な習性であるが、前日より少しでも海水温度が下がると食いが鈍くなる。
 これは、海水温の低下で魚の採餌行動が緩慢になるだけではない。
 海水温が急激に低下するとプランクトンの発生が抑制され、この、プランクトンを餌にするカタクチイワシ等の小魚や甲殻類がポイントに寄らないのが要因だと漁師は言う。
 水温が低下すると真鯛の動きも例外ではなく、群は低層に散在してしまい、採餌する遊泳範囲が狭くなっている。
 このような場合には海底近くを攻めるのも一手だ。

冷水塊は一月遅れで来る。水温が上昇に転ずるまでは食わんぞ。 漁師の格言
 特に干満差の大きい、春の3月、4月の大潮後の数日、瀬戸内海よりの冷たい海水が豊後水道に流下して来る。
 気温より、概、1ヶ月遅れの流下であり、水温は14度前後だが、寒い年には13度台まで低下する。
 真鯛やチダイの映像が多く確認できても多く釣れないことが多い。
 この原因は「干き潮が強く流下し、満ち潮は緩慢となる」豊後水道大分県側の地形による現象で、四浦半島や鶴見半島に遮られて瀬戸内海の冷たい海水が沿岸部に滞留するからに相違ない。
 鯛類だけでなくアジ等が確認されても食いが悪く、海水の温度が上昇に転ずるまでは釣果は今一つである。
 この頃には、低層から中層にかけて「産卵前の真鯛の群泳」が映られるが、低温で{採餌スイッチ}が入らず、たまに「当たり」があっても、遠慮がちに食うから鈎掛かりが悪く釣果は少ない。尚、暖かな晴天の2日目頃には若干釣果が上向くようだ。
 急な水温の低下時には、プランクトンの発生が急激に減少する。この為、前日に比較すると、明らかに海水の透明度が増すから容易に判別できる。

朝まじめ、夕まじめにゃあ、どのいお(魚)も食うんじゃあ。    漁師の格言
 一日のうちにもサイクルがある。湧昇流が発生する沈み瀬や漁礁付近では、朝夕のまずめ時になるとプランクトンが必ず沸く。
 カタクチイワシやウルメイワシ、キビナゴ等の小魚群は、このプランクトンの発生を驚くほど迅速に察知して寄り集まる。近くの漁礁や沈み瀬付近に居る真鯛やハマチ、アジ、イサキなどの群は、これらの小魚群を追って次第に中層まで浮上する。
 しかし、一定の時間帯{まじめ時}を過ぎると、これらのプランクトンは何時の間にか霧散してしまい、これに附けた魚達も姿を消すことになる。又、朝まじめ、夕まじめは、昼行性魚と夜行性魚の交替の時間帯であり、前後して、双方の魚が活発に採餌活動をする。
まじ(南風)が吹いたら 食わんのじゃー。    漁師の格言

 東シナ海シナや台湾付近で低気圧(台湾坊主など)が発達して南風(まじ)が強くなり「明日は雨になる」ような気象状態になると真鯛等の大魚の食いは大幅に悪くなる。
 この状況は、気圧が急速に低下しつつある状況にあるからであり、これを嫌う真鯛などの魚に悪影響を与えるのであろう。
 底引き網漁師の話では、海底の砂泥が異常に柔らかくなり、大きく漁獲量が低下すると言う。気圧が海底の泥の軟弱と、どのように関連があるのかは判らない。
 尚、夏季における晴天時の南風は地形的なものであり、極端な気圧の変化は無いので真鯛の食いには影響はない。
大潮でなけりゃー口がねえんじゃー潮が行かんと食わんのじゃー。漁師の格言

 小潮時には動きの遅かった海水も、大潮になるとその数倍もの海水が瀬戸内海に出入りする。
 大海原が一斉に移動するのであるから、そのエネルギーは物凄く、小魚群はこの海水全体の一部となって漁礁や沈み瀬上を約6時間おきに往復して通過することになる。
 速い潮流により、沈み瀬付近などで湧昇流が発生するだけでなく、複雑な地形によって逆流現象もみられる。真鯛やチダイ、アジ、イサキ、ブリなどの魚は、潮流に負けずに一定のポイントに留まって餌の流下を待てばいいのである。
 同じ採餌活動をして成長する、関アジ、関サバ漁場の南部に位置する当地方が、全国的にも稀な真鯛の好漁場となっているのも、このような好条件に恵まれているからだ。
 一本釣り漁師は、小潮時には漁獲量が極端に減少するから出漁せず、漁船、漁具の手入れや仕掛けの作成などをして過ごす。この時が漁師の重要な情報交換の場となる。


真鯛は夜釣れるか
 真鯛は、夜間にも採食行動が鈍くなることはなく盛んに餌を追う。真鯛の好む赤エビや車エビ等のエビ類やシャコ類、カニ類の殆どは夜行性であるから、これらを食するのであろう。
 「夕まずめ」にはエビ類など夜行性の甲殻類が活動を始めるから、真鯛の採餌活動も活発になる。
 初夏から盆頃にかけては、各種のゴカイが産卵成虫となり、夜間に海中に出て早い動きで泳ぎ回る。真鯛も、このゴカイ類を食することになる。
 この頃には、水の子島、高島、保戸島沖等の豊後水道本流域で、船を潮流に乗せ、ゴカイを餌にしてイサキの夜釣り(漁師は、夜バンサコ釣りと称する)をしていると、1s程度の小鯛や2〜3s物の中真鯛が中層から低層で多く混漁される。
 漁師は、初夏の夜間には、5号程度のハリスで作成した真鯛専用の枝間の広い[胴付き仕掛け]に朝鮮ゴカイや太めのゴカイを掛けて大真鯛を狙うことも多く、一晩に数十sもの大漁も稀ではない。この釣り方を漁師は{ムシ鯛釣り}と称する。特に、大きくて動きのいい朝鮮ゴカイ(青ケブ)を餌にするといい釣果を出す。
 夜間に[てんや釣り]を経験した、数少ない漁師の話では、月夜に浅場で「てんや釣り」をすると、真鯛の他に大チヌやホゴを含めた釣果があるが、日中の釣りの方が勝ると言う。尚、夜の[エバ鯛釣り]などのサビキ仕掛けでの釣果も「大きな期待はできない」との話。




   釣り日記について
 真鯛等の大魚の動きを知るには、釣り日記など過去の情報が非常に有用となる。今日からでもいい「釣り日記」を記けることをお勧めしたい。
 春先に乗っ込んだ真鯛は、餌となる甲殻類の発生や、小魚群、イカ類の来流につれて移動し、生息条件のいいポイントに居付く。
 不思議にも、このパターンは多少の増減や少しばかりの「ずれ」はあっても、毎年大きな狂いはなく、必ずやってくる。

魚の移動と草花の開花に三日のずれはない   漁師の格言
 草花の開花の例を桜の開花時期で比較してみよう。気象異変で寒い年でも暖冬であっても大幅な狂いは無く、毎年3月下旬には必ず咲く。海中でも、これと同様に大きなずれは無いのである。

この日記に記入する事項は
 釣行年月日と旧暦日、天候と風向やポイント、釣れた時間帯は必ず記入する。
 ポイント、特に山の位置は詳細に記載しておく。 例(手前の○○灯台と遠くの☆☆島の右端)
 釣れた魚名と大きさ、その数。魚の食い付き状態。例(中真鯛1.5s物6匹底から15mなど)
 漁法とその仕掛け。例 胴付き仕掛け(主4号、枝3号3本40cm)鈎(チヌ4号)など。
 潮流方向とその強弱。この際、潮汐に関係のある旧暦は必ず記入しておく。 例 (旧暦2日11時に上潮止まり、満ちに変わってよく釣れた)
 付け餌と撒き餌等の量、餌の入手方法。小魚群を確認した場合、その種類及び群の状態と規模。
 釣った魚を料理した場合、食して胃に入っている餌の種類や太さ。魚の肥満状態と抱卵の有無。
 陸の草花の開花状態と動物の状況例。
※ 一斉に訪れる自然現象を書くこと。(山桜が咲いた、みかん開花、ホトトギス来飛、モクセイ開花、猫発情、彼岸花開花など)


周辺海域における真鯛の移動と習性
時季による真鯛の移動
 当地方の真鯛の移動には、年に2度、春と秋に大きなピークがある。春桜咲く頃から茶摘み頃にかけては、産卵母鯛である婚姻色の濃い「乗っ込み鯛(桜鯛)」が、日向灘より瀬戸内海へと次々と移動するだけでなく、沖合いの深場より沿岸部の浅場にも寄る。
 逆に、秋10月の温州みかんの色づき始める頃には瀬戸内海からの「落ち鯛」が南下し、この地、豊後水道を通過する。瀬戸内海への出入り口に当る当地方では、この春と秋にみられる二回の真鯛の通過時季は見逃せない。
 移動時季を過ぎると真鯛が居なくなるのではない。豊後水道西部水域の{居附き真鯛}は、年間を通して{大中小、各サイズの真鯛}が常に多く居り、春秋の移動時期には、これに上乗せした状態で{移動真鯛}が通過すると理解していい。
 餌となるカタクチイワシやウルメイワシ・イカナゴ・マイワシ・キビナゴ・ヒイラギ等の小魚群が来流した時や、エビやアミ・カニ等甲殻類の大発生等があれば、年間を通して時季に関係なく、これらの餌となる小魚群等を敏感に察知して、多くの大中小の真鯛やハマチ等がやって来る。
 漁師の話では、真鯛は遠くからの「餌の泳ぐ振動」や「流れて来る匂い」を追って来るのだそうだ。"これは凄い"
 無垢島、保戸島、高島、水の子島付近等の沖合い急流域に各種類のイカの群れが来流すると、これには、必ず、大真鯛や中真鯛、ブリ、ヒラメなどの大魚が附ける。
 イカ類に附ける大真鯛が多く居付くポイントは、急流域の50mを越すような海底に設置された漁礁や沈み瀬、沈船、それに潮流が吹き上がる、深場より立ち上がった台地の「浅ガリ」などである。
 無垢島沖や保戸島沖では100mから150mを越す海溝となっている。この「海溝から台地への駆け上がり」や沈み瀬等が、冬期の大真鯛の居附くポイントとなる。この場合、活きイカを掛けて「胴付き仕掛け」で狙うのが最も効率がいい。
 イカ群の来流時季であるが、夏にはケンサキイカ、スルメイカ、秋にはケンサキイカ、モイカ、晩秋からはシリヤケイカ、コブイカ、キンコウイカ、寒スルメ(ヤリイカ)等が来る。
 白石、貴船島、高井島、観音崎、楠屋鼻などの沿岸真鯛ポイントには、大中小の真鯛やチダイが通年居るが、餌となる甲殻類やカタクチイワシ群などの小魚類の動向などによって増減を繰り返す。
 豊後水道、四浦半島北部の保戸島周辺や沿岸部の高井島、貴船島、片鼻付近での、800g〜2sほどの産卵真鯛の乗っ込みの「はしり=第一波」は早く、2月に入って少しばかり春めいた頃である。又、養殖筏等には大真鯛が居付く。この真鯛達はエビ餌には食い渋り、ぶり養殖場での投餌用の冷凍サンマ、冷凍サバ等の身餌に良く餌附く。
 (中旬)には、600〜800gを中心に1.5s物の真鯛群が、各真鯛ポイントに来流するようになる。
 この頃には小型のイシガキダイも小群となって、次々に乗っ込む。

 少し遅れて山桜の咲く頃になると、沖合いの深場から前記ポイントの他、白石、楠屋鼻などの沈み瀬には、婚姻色に若干浅黒く染まった産卵真鯛の乗っ込みがみられる。
 やがて、産卵真鯛は浅い藻場に寄るようになり、小規模なモイカ網に10匹単位の大真鯛中真鯛が混獲されるのも、この頃である。しかし、餌となる小魚群の来流が遅れると真鯛の乗っ込みも遅くなるようだ。
 尚、この主流の真鯛が乗っ込む直前には、5sクラスのイシダイ群や小型カンダイの来流も見られるものだ。
 3月から4月にかけては、瀬戸内海の13度〜14度の冷水塊が流下する時季がある。このような時には{真鯛}の動きは鈍くなってしまう。{真鯛}や{チダイ}群が確認されても食いが悪く、海水の温度が上昇に転じるまでは、サビキでの[エバ鯛釣り]の釣果は今一つである。
 梅雨前にかけては、無垢島沖や保戸島沖の深海からの「海溝の駆け上がり」や沈み瀬等では、アミの発生があるらしく、1sを越す真鯛や{サバ}などが大挙して居附く。魚探で映像が確認できれば[エバ鯛釣り]や「スキン、鳥毛カブラ釣り」でやると釣果があがる。
 この頃には大群となったヒヨドリの渡りが見られ、天敵の鷹などを避けて海面すれすれを、島伝いに次々と瀬戸内海方面に向けて北上する。イサキの来流もこの頃が第一波。

晩春  真鯛は、やがては産卵を始めるが、漁師の目撃例だと、夜間に「入り江の沈み瀬や藻場付近の表層」に、多くの真鯛が集って「産卵のスリ行動」をすると言う。
 春から初夏にかけての産卵移動群は、低層から中層にかけて、その遊泳層が上下に広いのが特徴である。又、この時季の真鯛は、追う小魚群の種類や群の動きに合わせて移動し、定着には一貫性がない。

初夏  初夏から盆頃にかけては、各種のゴカイが成虫となり、夜間には、産卵する為に一斉に海中に出て早い動きで泳ぎ回る。ゴカイは真鯛・チダイ・アジ・イサキ等の大好物なので、真鯛もこのゴカイを食することになる。
 この頃には、水の子島、[保戸島沖スカ漁礁]等の急流域では、{大真鯛}を含んで、箸長から1s、2s物の中真鯛が低層から中層で多く混漁される。釣り方は、魚探で{真鯛群}を確認次第、[胴付き仕掛け]にゴカイを餌にして、船を潮流に乗せて{真鯛群}の上を通過させて狙う。

盛夏  梅雨明けから盆過ぎにかけては、無垢島北東沖の豊後水道中央部に位置する、「海溝の駆け上がり」の沈み瀬ではアミの発生があり、800〜2sを越す真鯛が大挙して居附く。
 このポイントでは「スキン、鳥毛カブラ釣り」でやると釣果があがる。
 夏には、無垢島付近等の急流域では、岩礁地帯の浅い藻場などに大鯛が寄るようになる。アワビ、サザエ漁の潜水漁師が、多くの大鯛を目視するのもこの頃である。
 盆前には、白石、貴船島、高井島、観音崎、楠屋鼻などの真鯛の沿岸ポイントには、イワシ群を追った3s〜4s級の真鯛が多く来るから油断しないでイワシ群を探索することだ。
 夏の真鯛はカタクチイワシやウルメイワシ、アミ、エビ等の群に附けて移動するが、沖合いの豊後水道本流域にケンサキイカやスルメイカ群が大量に来流すると、迅速に大真鯛や中真鯛がこれに附ける。「海溝の駆け上がり」や漁礁や沈み瀬付近に於て[胴付き仕掛け活きイカ掛け]で攻めるがいい。

初秋  9月中旬になると、台風の通過後や大雨の後には、漁師が「にが潮」や「黒潮」と呼ぶ濃いプランクトンが、湧くように必ず大発生する。このプランクトンは毒性が無いので(異常に濃く繁殖すると酸欠の被害がでるが)イワシ類のご馳走となり、カタクチイワシやウルメイワシが大群となって附ける。
 このイワシ類には、ヤズ(ハマチの当歳魚=600g前後)の大群(一群で数千匹〜数万匹)が餌付いて、彼方此方で湧く。真鯛もこのご馳走を見逃す訳はなく、大真鯛、中小真鯛が数多く附けて来る。
 潮通しのいい位置に設置された漁礁や沈み瀬周辺で、この、カタクチイワシやウルメイワシ群を補足できたならば、「イワシ鯛釣り」で攻めれば、中真鯛だけでなく、5sを越す大物混じりの真鯛の大漁も普通の釣果。このイワシ群には、サワラ、ブリ、大アジ等も附けて来るので混漁される。
 秋の彼岸過ぎの頃には、「どんかん」と呼ばれる白い大型クラゲ(ビゼンクラゲ系の幽霊クラゲ)が浮いて来流する。
 この頃になると、多くの中小の真鯛が浅い藻場に寄るようになる。このクラゲは例年10月下旬には成熟死して浜辺を漂う。
 この時季には、サバフクの大群が真鯛のポイントに居付いており、仕掛けを咬み切るので実に釣りづらい。

 温州みかんの色づく頃(10月上旬)になると、落ち鯛が本番となり、各ポイントには1s物〜3s物の中真鯛の群(個々散在して濃密群ではない場合もある)がやって来る。これらの真鯛群は瀬戸内海より太平洋へ出る「落ち鯛」であり、年間を通して最も真鯛の多いのもこの頃となる。
 この頃には、ブリやハマチ、サワラ等の魚影も濃いが、タチウオやエソの他に、サバフク等のフグ類が多いので非常に釣りづらい。
 サバフクは例年であれば10月下旬には姿を消すが、海水温の高い年には11月にずれ込むこともある。

晩秋  この時季にはイカ類が多い。モイカ、ケンサキイカ、ヤリイカ、シリヤケイカ、コブイカ、モンコウイカが来流する。
 これらのイカ類には大真鯛中真鯛の他に、ブリや大ヒラメ等が必ず附けている。特に四浦半島先端部では、モイカを狙った10クラスの大真鯛が藻際を回遊する。餌木釣りに掛かったもイカを喰い盗って行くことが頻繁となる。
 来流したイカの種類を特定して、その「イカの活き餌」を手に入れ、胴付き仕掛けで「イカ鯛釣り」をすると、これら大魚の大漁は間違いない。ポイントは、無垢島、保戸島付近から高島下などの、豊後水道本流域に点在する沈み瀬や漁礁付近を中心に探るがいい。
 例年11月を中心に、瀬戸内海より日向灘に落ちる「大型メジナ」の大群が次々に当地方を通過する。このメジナは、500gから800gの大型であり、数百、時には二千匹から三千匹もの大群となって、表層を磯際に沿って断続的に南下する。
 これらのメジナ群は、北西の季節風が吹く荒天時{出漁できない程の}でないと移動しないのが特徴である。

初冬  晩秋〜年末頃にかけては、未だ、海水の温度は極端に低くはならず、餌となるイワシ類の群が居れば真鯛やハマチ・カンパチ等の多い状態は続く。
 この頃から3月頃にかけて、貴船島沖合いの瀬など各漁礁や沈み瀬には、「瀬附きの中型の真鯛」が多く居付く。

 海水温が低下する晩秋から早春にかけての真鯛は、水温の安定する深いポイントに寄り集まるが、その居付く範囲は狭くなり、その密集度が濃くなる。
 特に寒期の真鯛は、漁師が(土俵の広さ)と表現する位、餌となる小魚や甲殻類、イカ類の多く居る沈み瀬、漁礁、沈船や一寸した落沈物などの狭いポイントに附く。
 このように「瀬附き真鯛」となった状態の真鯛を狙うのであるから、最初の真鯛が鈎掛かりした際には、釣り揚げながら、素早く緻密な{山を立て}をし、その位置を特定して攻めることだ。
 ケンサキイカやコブイカ・シリヤケイカの活き餌が手に入れば、これらの活き餌を掛けて胴付き仕掛けで大真鯛を狙うがいい。

厳寒  正月頃から2月にかけては最も寒い酷寒期であるが、海水温度が最も低下するのは、約1か月遅れの3月から4月となる。低温期ではあるが旧正月頃までは、沿岸部の真鯛ポイントで魚探に真鯛の映像があれば[エバ鯛釣り]で狙うと、800g〜1s物の釣果が期待できる。
 水温の下がる冬期には、無垢島沖や保戸島沖の100mから150m、時には200mを越すような「海溝状の深場」の「かけあがり」や沈み瀬付近には大真鯛が多く寄る。
 ケンサキイカやコブイカ、ヤリイカ等に附けているので、これらの活イカを「胴付仕掛け」に鈎掛けして狙うのであるが、俗に漁師が一貫目鯛と呼ぶ4sクラスは並であり、7sを上回る真鯛や大ヒラメ、10sを越す外道の大ブリの混獲も珍しくはない。この釣りは実に豪快であり面白い。
 出す糸は、糸フケを合わせると150mを越し、深海釣りを経験することになる。尚、この頃は北西の季節風が強く出漁できない日が多い。豊後水道は季節風の通り道となっているから「気象の変化」には細心の注意が必要だ。
 2月も下旬に入ると水温が低下して真鯛やチダイの映像があっても、大きな釣果が出ない日もある。




真鯛漁場の地形
 当地方は、豊後水道中央部の九州側に位置する。引力による海水の干満活動により、太平洋の海水が潮流となって瀬戸内海との間を、約6時間おきに北上と南下を繰り返して出入りする。
 潮流は広い海原全体が猛然と移動することであり、自然はすごいエネルギーを持っている。
 島礁や複雑な地形により、渦を巻くような速い潮流が走るだけでなく、漁師が「さかま」と表現する逆流現象が現れる場所も多い。
 この海水の動きに乗って、餌となる甲殻類やイワシ群が来流するから、ブリや真鯛等の大魚は常に漁礁や沈み瀬の潮上側(上流)に群れて餌を待つ習性が身に付いている。
 海原全体の下にある海底は、島礁際が潮流に掘られて海溝状に深くなっており、無垢島や保戸島沖海域の最深部は100mをゆうに越す。全域に島礁も多く、海岸線は地形が複雑に出入りしたリアス式海岸を形成し、四浦半島沿岸部でも急な落ち込みを見せ、島礁際でも30m〜70mにも及ぶ水深となっている。
 逆に下流側の島礁から離れて潮流が緩やかになった海域においては、潮流で運ばれた土砂や貝殻などが積って浅くなっており、傾斜も極端ではなく根掛りもない。
 豊後水道本流域には、真鯛やヒラメ、ブリ等の好む天然礁と言われる沈み瀬や沈船が無数に存在するだけでなく、人工的な漁礁も数多く設置されている。
 瀬戸内海には流れ込む河川が多く、山野よりの流入水は豊富な栄養分を瀬戸内海に持ち込む。この低温の海水と、日向灘より流入する水温の高い黒潮が豊後水道で混ざり合う。
 特に春先は、蒲江沖の黒潮本流の水温は21度前後、別府湾の海水温は12度〜13度、津久見湾で14度と、その温度差は、外洋と瀬戸内海を結ぶ豊後水道の僅かに30Km程で、実に8から9度に達する。このように海水温度に大差のある海域はどこにも無いと聞く。尚、初夏から秋にかけて温度差は次第に減少するが、逆に、降雨量が増えるので、瀬戸内海への河川からの流入量は多くなって、外洋との塩分差は大きくなり、栄養分は高くなる。
 この潮境にあたる豊後水道では、年間を通して各種のプランクトンが多く発生する。このプランクトンを餌とする、アミや小エビなどの甲殻類が大発生することになる。
 さらに、これらのプランクトンや小さな甲殻類を餌とするカタクチイワシやウルメイワシ・イカナゴ・きびなご・マイワシや各魚種の幼稚魚が大群となって寄り集まる。
 このイワシ類に附けてこれを食するのが、有名な「関アジ」「関サバ」であり、ハマチ・ブリ・真鯛やヒラメは食物連鎖では同位、又は、この上に位する。
 このプランクトンや甲殻類、イワシ類には、高級魚のメバルやチダイの他にイサキも附ける。



真鯛とは こんな魚だ
真鯛には 学習能力がある
 真鯛釣りの漁師が実行する「真鯛の習性を利用した漁技」や、自からの経験を加味して推測すると、真鯛には「顕著な学習能力と若干の伝達能力がある」との結論に達する。
その証は
 魚類の養殖場では投餌船のエンジン音を認識し、投餌前でも寄り集まること。
 投餌船の来る時間帯を覚えており、休日にも、その時間帯には行動する。
 投餌船の係留位置を知っており、その位置に寄る。
 「ふかせ釣り」では、その船のエンジン音を覚えており、エビを撒かなくても、概、15分程度で船の下方に寄り集まる。
 [ふかせ釣り]では、海面で撒く「撒き餌のエビ」を一定の水深で待つ。(自然界では水面からエビの泳ぎ込みは無い)
 [ふかせ釣り]の場合、大鯛を釣り揚げる途中に釣り逃がすと、他の真鯛の食いが止まる。流し釣りの場合は、数匹漁獲すると警戒して釣れなくなる。 ( 漁師はカドルと表現する )
 大分県が真鯛の音響馴致なるものを考案して、保戸島前や楠屋鼻南西などに音響投餌ロボットを設置している。
 漁師によると、小さな真鯛は寄るが、中真鯛や大真鯛は餌となるイカ類やカタクチイワシ等の小魚群が長居しないので居附きは乏しいとのこと。又、この投げ餌には雑魚が多く居着いており、「ふかせ釣り」などは難しい。

真鯛には 伝達能力がある。
 個々の縄張りにより、沈み瀬や漁礁付近を中心に広域に散在している真鯛であるが、活きたエビを撒き餌にしたり、小魚類の大群が接近すると、上流から流れて来る「小魚の匂いや波動」を敏感にキャッチして驚く程の短時間で寄り集う。
 真鯛特有の察知能力があるのかも知れないが、一本釣り漁師によると真鯛には独特の伝達能力があり、歯を鳴らして真鯛同士が呼び合うと言う。その反面、危険を察知すると警戒警報を発することになる。
 この証は、釣り揚げる途中に釣り逃がすと、それまで当っていたのに急に食いが止まったり、真鯛は多いのに、数匹釣り揚げると釣れなくなった経験も数え切れない程に多い。尚、大真鯛に至っては、一匹釣り揚げてから時間をおいて二匹目がやっと釣れるパターンが多く、三匹目が容易に釣れないこと。これが大真鯛釣りの常なのである。
 大真鯛が雌雄2匹で行動すると言う「ゆえん」でもある。尚、イワシ群に附けた真鯛を狙う{イワシ鯛釣り}では、真鯛達の密集度が高いだけでなく、採餌行動が活性化しているからこの限りではない。
 真鯛がこのように、釣具等の危険を察知して釣れなくなる状態を、漁師は「カドル」と表現し「竜宮城の乙姫様が鯛に危険を知らせるんじゃー」と笑う。このように「カドル」ことが顕著、な魚には、大型中型の真鯛と大型イシダイ、ブリ、大型のメバル等がある。
 真鯛の「縄張りや伝達能力」、「カドル」習性についての文献は見当たらない。漁師の長年の経験と探究心は学者に勝る研究者であり、偉大なる未知の世界の発見者なのである。

真鯛には 縄張りがある
 一般的には知られてないが、真鯛には、川に居る「鮎」に似た顕著な縄張りがある。このような習性があるからこそ、常時、濃密な群れを形成していないのであろう。
 秋に見かける10センチ程度の当歳魚でも、他の真鯛の幼魚が近づくと背鰭や腹鰭を広げて猛然と追い払う。その、幼真鯛の縄張りエリアは2m程度と見た。
 鯛漁師の経験では真鯛の大きさに比例して縄張りエリアは広く、大真鯛のそれは可視範囲以上であると言う。しかし、このような真鯛も、湧昇流の湧くポイントなど、餌となる小魚やエビなどの甲殻類が多いと縄張りは一時的に解け、不思議な行動であるが仲間を呼ぶのだそうだ。
 この真鯛の大集合は、イワシ類に附けた真鯛を釣る際に、数sを越す大真鯛がWで鈎掛かりすることでも証明される。しかし、附けた小魚の群が減少すると、縄張りエリアは急速に拡大し真鯛の群は霧散する。尚、産卵期にも大真鯛や中真鯛が多く集うが、これは、カレイやカサゴ等の単独行動する魚にも、産卵期だけに見られる「寄り魚現象」であり、繁殖活動に伴なう産卵期特有の行動であろう。

真鯛は 一年中多く居る。
 当地方の真鯛の動きには、年に二度、春と秋に大きなピークがある。
 早春の山桜の咲く頃から八十八夜頃にかけては、産卵母鯛である婚姻色の濃い「乗っ込み鯛(桜鯛)」が、日向灘より瀬戸内海へと次々と入り込むだけでなく、沖合いの深場より沿岸部の浅場にも寄る。逆に、秋10月の温州みかんの色づき始める頃には瀬戸内海からの「落ち鯛」が南下し、この地、豊後水道を通過する。
 瀬戸内海への出入り口に当る当地方では、この春と秋にみられる二回の真鯛の通過時季は見逃せない。
 移動時季を過ぎると真鯛が居なくなるのではない。豊後水道西部水域の{居附き真鯛}は、年間を通して、大中小、各サイズの真鯛が常に多く居り、春秋の移動時期には、これに上乗せした状態で{移動真鯛}が通過すると理解していい。

真鯛は 濃密な大群を形成しない。
 {アジ}{サバ}{ハマチ}{チダイ}等は、同歳、同一サイズ魚体で構成された何千、時には何万匹もの濃密な大群を形成して行動するが、真鯛群は他の魚類とは違って規模が小さく、個々散在した「真鯛が多い」状態に群れていたり、時には、魚探で確認できる程の群を形成する。
 唯一、その真鯛群の規模が判明する機会は、小魚群に附けた真鯛がカタクチイワシ漁の小型巻き網漁に混漁されることである。
 その際の真鯛の数であるが、一操業に、数年に一度の大漁時でも大真鯛中真鯛が混ざって200〜300匹程度なのである。魚影の濃かった30年程昔では一網に数百匹を越す大真鯛の混漁も珍しくはなかったと聞く。しかし、中真鯛や小真鯛群は絶対数が多いから、大真鯛よりも遥かに大きな群を成すようだ。
 これらの真鯛は、沈み瀬際付近などに湧昇流があると、カタクチイワシ、ウルメイワシ、イカナゴなどの小魚群や甲殻類が集るから、これらに附けて数十、数百の群となって頻繁に中層まで浮上する。しかし、ブリやサバ等の青魚とは違い、餌を追って広範囲に泳ぎ回るのではなく、上昇流が発生する瀬際や沈み瀬付近の特定で、餌を待つように低層から中層付近に居るのが特徴だ。
 魚群探知機に映る「浮上した真鯛群の映像」は、海底から離れて、低層から中層にかけて「星空状態に青や白の色が点在」した状態で映るのが特徴だ。又、漁礁や沈み瀬の潮上側の低層から中層に「ポツン、ポツン」と青く点在する映像も、散在した真鯛群である確率が高い。尚、チダイは大群となって低層から中層にかけて確認されることが多く、映像では、真鯛より密集度が高く、アジ群に類似した群や時には「濃い帯状」をなして、青い中に黄色や、時には赤が混在して見えるのが常であるが、たまには、真鯛の群に混ざっていることもある。

真鯛群は 大鯛中鯛、あるいは中鯛小鯛が混在している
 小魚群や甲殻類に付けて採餌中の真鯛は多くが集っており、中層に浮上して小さな群や希薄な群を形成することも多い。その群の形成状態には特徴があり、{大真鯛、中真鯛}又は{中真鯛、小真鯛}が混在しているのが普通である。
 これは、他の魚種の群には絶対に見られない現象だ。しかし、時季やポイント、あるいは附けている餌(食している餌)の種類や状態によっては、真鯛群の規模や各個体の大きさも異なり、大真鯛や中真鯛ばかりの群れもある。又、ポイントによって、太り具合や色艶まで個々微妙に違うものである。
 ベテラン漁師は魚体を一見しただけで、何処のポイントで捕れた真鯛であるかを判別する程凄い視力と経験を持っている。水深や潮流、餌の種類が、それらの差異となって表れるのであろう。

大きな真鯛は 群の上部に浅く居る。
 真鯛の群は大中の真鯛、又は中小真鯛が混在しているのが特徴であるが、不思議なことに群を形成した真鯛群は、同一群でも大型の個体程、上層に居ることが多い。※[ふかせ釣り]では後方の浅い位置で大真鯛が釣れる。しかし、沖合いの急流域に居る真鯛は、食性の違い、又は、天敵となる大魚が多いせいか、極く小型の真鯛の姿は少ないようだ。


真鯛は賢い。
 真鯛は賢い魚だ。「ハリスが太かったり」「釣り鈎が大きい」と食ってこない。又、餌は一気に口に入れない。先ず口先で噛み殺し、小さく噛みながら口にする。その証は「イカ鯛釣り」時に「小さな当たり」があっても鈎掛かりせず、鈎を飲み込むことがない点だ。

   
   真鯛が鈎を避けて食い千切ったイワシ。
真鯛の棘とエラには注意が必要。
 真鯛を釣り上げて鈎外しする際には、エラや背と腹の棘には細心の注意が必要である。魚体をくねらせて反発した際、棘で刺されたり、包丁のように鋭いエラで指などに切り傷を負うと魚体が大きい分だけ、その傷も大きい。
 特に若い真鯛の棘には多少の毒素があるらしく、オコゼやアイゴ、ゴンズイ程の激痛ではないが、刺さると大人でも顔を顰める程の痛さを感じて出血も伴う。又、数日間は鈍痛が残ることがある。
 鈎を外す際には、小鯛であっても、しっかりと両頬を掴んで慎重に外すことだ。2sを越すような真鯛は、スポンジマットに鯛を乗せ慎重に鈎を外すがいい。
 毒のある魚は美味い。これは本当だぞ。

真鯛は カメレオンだ。
 鮮明な鯛色の真鯛も、釣り揚げたばかりの時には、脅えたような色褪せた体色になっており、あの「桜色」の真鯛の面影はないものだ。又、船倉内での小鯛に至っては、手玉を入れると瞬時に逃避し、側壁に張り付いてシッポを片方に寄せて静止する一連の動作は凄い。その際、海底の岩石様の赤茶色に保護色となっているのはあっぱれだ。
 漁師によると、イルカやサメなどの天敵が近寄ると、瞬時に、沈み瀬や漁礁に張り付いて体色を変えて天敵をやり過ごすと言う。その証拠に、イルカ群が通過して「しばらく」すると、魚探に真鯛群の映像が映るようになるものだ。尚、ハマチやアジなどの他の魚は脅えて遠方に逃避してしまい、短時間では、その魚影は戻らない。

真鯛は 鈎を呑み込まない。
 真鯛は賢く餌を食う。口先で噛み潰してから口に入れるが、口内が臼歯状態なので口の中に鈎掛かりすることは非常に希であり、鈎を呑み込むことは皆無と言っていい。その反面、真鯛の唇は柔らかいので鈎掛かりも良く異常な程に丈夫なので、小さな3号アジ鈎でも腰まで深く掛かるから外れることはない。
 左が雌、右が雄と思われる。
真鯛の咬噛力は、ペンチより凄い。
 真鯛の口腔内には、数本の前歯の奥に臼歯状の歯が並び、噛む力は並大抵ではない。[てんや鈎]に付いている鋼鉄製の18号鈎でも、真正面に噛むと一噛みで折られてしまう。
 釣れた真鯛は、鈎を飲み込んでいることは無いから、鈎外しする時に真鯛の口の中に指を入れることは無いが、口の中に指を入れたならば、一噛みで潰されてしまうのは確実だ。しかし、不思議にも、釣り揚げられた真鯛達は、歯魚のような「噛み付き動作」をしないのが幸いだ。

真鯛は 鈎外しの名人だ。
 鈎掛かりした真鯛は、強力に持ち込んで「頭振り」をする。又、釣り上げる途中でも、周期的に「コク・コク」と持ち込んで「頭振り」を繰り返す。
 ※ 「頭振り」これは、正確には「曳き込む際の魚体のくねり」なので、頭を振ってはいない。
 真鯛の口腔内には、臼歯状の歯が並んでおり、口の中の粘膜に掛かった鈎は鈎先が深く刺さってないので、この動作によって粘膜が破れ、ものの見事に外されてしまう。
 特に「動きの乱雑な」中小の真鯛やチダイが釣れる[エバ鯛釣り]では、鈎掛かりした真鯛やチダイの半数近くが「釣り上げ中」に鈎を外して逃亡してしまうものだ。
 これは、唇に浅く掛かったり口腔内の膜に掛かった鈎が外れるからだ。その証は、捕り込んだ真鯛の鈎掛かりの位置が口腔内でなく、殆どの鈎が唇に深く掛かっている点でも証明できる。

真鯛は 潜水病?にかかり易い。
 釣り上げた大真鯛や中真鯛は、30m程度の水深であっても、水圧の急激な変化に耐え切れず、腹幕が浮き袋の如く膨張してしまい、生け簀に入れた際には、腹を上にして青息吐息の状態となるものだ。
  ※ 気体で膨張した位置は下腹部に限定されてはない・・・時には下腹部よりの「ふく抜き」ができず、左右の鰭の脇に針を刺すと、気体がうまく抜けることもある。
 このまま放置して置くと死んでしまうので、正常な遊泳姿勢にする為に、浮き袋状態となった腹腔内の気体を抜いてバランスを取る必用がある。
 真鯛の腹を上にして、注射針様の「フク取り道具」の先を、肛門脇から「砂擦り添い」に前に向けて少し刺すと、スーと空気の抜ける気配が感じるものだ。
 この際、手を添えて腹を押して空気を三分の二程度抜くといい。尚、空気を抜き過ぎると、真鯛は遊泳バランスを取れずに沈下して横になり、やがては死んでしまうから要注意。
※ 「フク抜き鈎」は細くていい・・・太い「フク抜き鈎」でやたら刺すと真鯛は死に至る・・・尚、釣鈎で代用できるベテラン漁師も居る。
 それでも「遊泳バランス」の取れない真鯛も、生け簀籠に入れて水圧のある数m以上の深さに吊るすと回復する確率が高い。尚、概、1s以下の真鯛は、「フク取り動作」をしなくても時間が立つと自然に回復することが多い。

真鯛は 疲れ易い。
 大きな真鯛が鈎掛かりした際には、根掛りしたかと思える程に鈍重な感じであるが、その直後には、ブリの如く猛烈な曳き込みを見せる。
 大きな真鯛でも、曳き込みは10m程で止まり、その後、中層に揚げるまでには数回の強力な曳き込みを見せるが、中層まで揚がると空気袋が張って浮上し、以外に「すんなりと」獲り込めるものだ。
 5sを越す大物でも、5号ハリスであれば「やりとり」だけで、容易に釣り上げることができる。

真鯛は 昼夜を問わず餌を漁る。
 真鯛は、夜間にも採食行動が鈍くなることはなく盛んに餌を追う。
 好物であるエビ類やシャコ等の甲殻類が夜行性であるだけでなく、カタクチイワシ等の小魚群の動きも緩慢になる。又、初夏から盆頃にかけては、各種のゴカイが産卵成虫となり、夜間に海中に出て早い動きで泳ぎ回る。
 真鯛も、この、甲殻類や小魚、ゴカイ類を見逃すことなく食することになる。

日焼けするのは 真鯛と人間だけ。
☆ 真鯛は「日焼け」するがチダイは「日焼け」しない。
☆ 真鯛は生簀を深く吊るせ。
 「日焼け」する動物は人間だけではない。見惚れるような「桜色の真鯛」も、数日も海面生簀に入れておくと、赤黒い「養殖真鯛」紛いの色となってしまう。太陽光線を軽減するには生簀を海中深く吊るしておくことだ。尚、類似したチダイは全く日焼けしないから不思議だ。
 真鯛は体型、色合いなど個体差が大きい。雌雄で顔形の違いがあり、左側2匹はメス、右側1匹がオスのようだ。

真鯛は人間と同じように個体差が大きい。
 上の写真は今年釣れた天然真鯛だが、顔形、体型、肥満度、色合い、大きさが人間のごとく個々違うものだが、ポイントや時季によっては色形のいい真鯛ばかりが釣れる日もある。
 概、深いポイントで甲殻類やアミ類を食っている真鯛は濃い鯛色をしており、多く釣れる時の真鯛は大きさや肥満度に極端な差異が少ない。これは、食っている餌の種類や大きさ、量が要因と思われる。



 
放流鯛について
左が放流真鯛や養殖真鯛の鼻穴、右が天然の真鯛の鼻穴と尻尾

天然真鯛の鼻穴は二つ 放流真鯛は鼻穴一つ。
 近年では、大分県を始め、瀬戸内海の各県が真鯛の稚魚を毎年多量に放流しており、その効果は絶大である。漁師によると「ふかせ釣り」等で漁獲される真鯛のうち、小型真鯛の大半は放流物であるとのこと。
 放流された真鯛でも、深い大海で天然の餌を食って育つのであるから色艶や食味は天然物と大差はないが、体型やヒレの状態が野性的でなく、鼻腔の形が違うので我々遊漁者でも容易に判別できる。
 真鯛の鼻の穴は左右にあるが、天然真鯛の鼻穴は、このようなビックリマーク状態の二つ穴(瓢箪型)が左右に、放流真鯛や養殖真鯛は細長い一つ穴(バナナ型)なので判別できる。※ 若干ではあるが例外もあると聞く。
   天然真鯛の尻尾は上下対等に開いており、下側が白みを帯びている。尚、養殖真鯛の尻尾は、下の部分が丸く変形しており白みが薄い。


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