なぜ美味い 豊後水道の魚


[肉質のいい魚を]を[一本釣りで]釣って[活き〆]する




豊後水道は魚の宝庫
 海水の干満活動により、太平洋の暖かい海水と、冷たくて栄養分豊富な瀬戸内海の海水が、1日に2往復出入りして豊後水道で混ざり合う。
この海水の動きによって、食物連鎖の根幹となるプランクトンが大発生し、これを餌とする甲殻類やイワシ類の群が大挙してやって来る。さらに、エビ類やイワシ類が大好物の真鯛やイカ類の他に大アジ・大サバ・ブリ等の大型魚が群れることになる


美味しいのは{関アジ・関サバ}だけではない
 豊後水道の美味しい魚は関アジと関サバだけではない。他に真鯛・チダイ・ブリ、ハマチ・トラフグ・イサキ・サワラ・タチウオ・アマダイ・イトヨリ・など・など。イカ類ではヤリイカ・ケンサキイカ・アオリイカ・コブイカ・紋甲イカ等がある。
これらの魚は、栄養分たっぷりのエビやイワシ類、イカ類をふんだんに食しながら起伏に富んだ急流域で鍛えられ、身の引き締まった{しもふり}状態の脂肪を蓄えた魚体となるのである。

 特に絶品なのは沿岸部で超年したマアジ(右下の写真)、体色が黄金色となる程に脂肪分を蓄積している。







「一本釣り」の魚は味が違う
 「一本釣り」で釣り上げた「関アジ・関サバ」は確かに美味い。当地、津久見市の半島部は漁場が「関アジ・関サバ」の釣れる「豊後水道北部」であり、昔から一本釣りで釣り揚げた「大アジ・大サバ」は「釣りアジ」「釣りサバ」と称して珍重されてきた。しかし、同一漁場に於いて「巻き網」で捕獲した「大アジ・大サバ」は、その食味が数段落ちるから「網もの」と呼ばれて敬遠され、昔から浜価も半値以下が通り相場だった。同じ、活きた魚を〆るのに、何故、これ程「味に格差がでる」のか長い間疑問であったが、その答は、漁師の話や活魚仲買人による活魚の扱い方を観察するうちに出てきた。
 関アジ、関サバの他、真鯛やブリ等の全ての大魚は、体内全体に広がる遊泳筋肉内に旨味となる「しもふり」状の脂肪分を蓄積している。この「しもふり脂肪分」は、天敵からの逃避時や採餌の際に瞬間的なエネルギーの役目をすると漁師は言う。「しもふり脂肪分は爆薬だ」と表現する程だ。
 一本釣りで漁獲する「関アジ・関サバ」は、釣り上げる時間が僅かに数分間であり、活魚船倉は暗くて適度に狭いから多少のストレスがあってもエネルギーを使用しない。又、大量に漁獲することのできない一本釣り漁なので酸欠の心配もない。
一方、網漁で捕る魚は、網で包囲してから水揚げするまでの間、時間単位の過度のストレスを与える上に、逃げようとして網の底で超過密となる。又、網を寄せた際にも魚同士が過密状態となって傷つき酸欠状態が続く。その上、大量漁獲した魚を運搬船の活魚船倉に過密に入れたり、「チョウチン」と呼ばれる運搬具を浮かべて、漁場から漁船で牽引して数時間もの時間を費やして自港に持ち帰ることになる。もう最悪だ。このように、ストレスと酸欠で弱った魚は、例え生きていても酸欠で抹消血管の血流が阻害されており、完全に「しもふりの脂肪分」が飛んで肉質が悪くなっているから食味が違うことになる。





活き〆とは  詳しくは「活き〆の方法・・・」のページをご覧下さい。
 活きた魚の急所を刺して、同時に血液を抜き、手早く潮氷(海水に多量の氷を入れたもの)に入れる。これが基本であり、一連の動作を漁師は{活き〆}と表現する。又、真鯛やブリなどの大形の高級魚には、鼻孔や尻尾近くから脊髄内にピアノ線を通し入れて延髄を破壊する方法もある。これは「活き〆効果」が大きく助長される「究極の活き〆技術」だが、習得には多くの経験が必要だ。
※ 容器に海水に同量程度の「かち割り氷」を入れ、事前に準備したものを漁師は「潮氷」と称する。
 〆てから僅か数分後に冷蔵庫に入れた魚と「〆ると同時」に「血抜き」して「直ちに潮氷に入れた」魚を比較すると、「別の魚ではないか」と思える程に「色合いや食味」が違うものだ。特に「日持ち」の差は歴然だ。
※ 釣りを愛する諸君、クーラー内にカチ割り氷と同量の海水を入れ潮氷を作っておき、釣った魚は「生きているうちに活き〆」することをお忘れでないぞ! 尚、小魚は生きたまま潮氷に入れるだけでもいい。

 魚を水揚げして〆る際にも「しもふりの脂肪分」を飛ばさないように、細心の注意が必要だ。〆る魚を生け簀や活魚船倉内で過度に追い回したり、手玉ですくい揚げた際に、船上で「バタバタ」させるような過度のストレスを与えると、僅か数十秒単位の短時間で「しもふり脂肪分」を爆発的に消費してしまう。その際、魚の体温が急上昇して肉質も悪くなってしまう。当然ながら食味も味気無いものとなってしまう。
これを防ぐには、魚は同時に大量に水揚げせず、1匹ずつ「そっと」手玉で、すくい揚げて、スポンジマットに乗せて速やかに〆る。これが基本。活きて暴れる魚でも、スポンジマットに乗せると「動き」を止めて静かになるから不思議だ。

 〆ると同時に血液を抜くことで、魚の臭みを取り除き、鮮度と肉質を確保することができる。尚、延髄を切ると出血するが、手早く血液を抜くには、エラの奥にある「幕」を、手鉤や包丁で掻っ切ると血液が噴出するものだ。
 〆た魚は、体温が急上昇するから、そのまま放置すると「僅か数分間」で鮮度や肉質が極端に落ちる。これを防ぐには「〆ると同時に血抜き操作を終え」直ちに「潮氷に入れる」ことだ。※ 1㎏物の真鯛やハマチであれば、30分位「潮氷」に入れと、魚体の芯まで「潮氷」の冷えが浸透する。





面買いとは
 関アジ、関サバで有名な佐賀関や保戸島方面では、一本釣り漁師が漁獲した魚を売買する際、魚に計量時のストレスや傷を与えない為に「面買い」なる取引きをする。これは、魚体の大小に関わらず同年齢・同種の魚を「1匹いくら」で取引きして、帰港次第、瞬時に生簀に移すのである。



「生きている魚は旨い」は神話
 漁師の話では、活魚店や料理屋の生け簀の魚は、魚獲されてから日数が多く経過しているだけではない。この間、長距離輸送時の酸欠や、数度にわたる「移し替え」など、想像を絶する過度のストレスを受けており、「しもふり」が完全に飛んでしまい「活きているだけの魚」となっている可能性が高いと言う。このような魚は、旨味が無くて、シコシコと歯ざわりがいいだけの魚となっており、もう最悪だ。と・・・
一本釣り漁師が言うには、活き〆した魚であれば2・3日経過していても料理屋の水槽の生きた魚よりも格段と旨いぞ、と・・・



豊後水道の真鯛はDNAが違う
 美味い魚は関アジ、関サバだけではない。特に真鯛やトラフグは豊後水道で漁獲されるものが、国内最上級の食味だと言われている。
瀬戸内海へ出入りする急潮流と、多様性に富む豊富な餌が、真鯛やフグ等の味を「美味くする」要因の一つであることは疑いないが、豊後水道で春夏秋冬を通して多く釣れる真鯛の場合は、もう一つ真相は違うらしい。

 水産関係の専門技師の話では、豊後水道海域の真鯛と他地域の真鯛は「DNAが微妙に違う」のだそうだ。
豊後水道水域の真鯛の成長は、他の海域のそれよりは極端に遅く、40cm(約1㎏)に達するには5年もの年月を要すると言う。一方、玄界灘等日本海側の真鯛や東海地方の真鯛は、3年~4年でこのサイズに成長するとのことなので、これに比べると1年から2年は遅いことになる。
豊後水道の真鯛が「急流域で年月をかけて旨味を蓄えている」からこそ、最上級の食味だと言われるのもうなずける。
 ちなみに、大分県の沿岸に放流する真鯛の稚魚は、DNAの混濁を防ぐ為に、佐賀関半島で捕れた母鯛から生産されたものだそうだ。又、養殖用の{真鯛}の稚魚は、近畿地方より移入した成長率のいい母鯛からの生産されるとのこと。

脂がのった色合いのいい真鯛・・・こんな真鯛が最も旨い



天然ヒラメと養殖ヒラメの見分け方
 天然ヒラメ(写真左)の下腹は真っ白だが、養殖ヒラメや放流ヒラメ(写真右)の下腹には若干のシミ模様が見られるのが特徴・・・魚の取り引き業者などは親しみを込めて「ブッチャー」や「パンダ」などと称する。尚、このシミ模様は一律ではない。
天然ヒラメは、海底の砂と同じ色合いの保護色となって頭上を通過するアジやイワシ類などを襲うから、ヒラメは海底の砂の色をしていると聞く。




天然真鯛と養殖真鯛の見分け方
 天然真鯛(写真左)の鼻穴は「ビックリマークの如く」前後二つになっているが、養殖真鯛(写真右)や放流真鯛の鼻穴は細長く一つである。尚、天然真鯛の尻尾は先端まで扇状に広がっており下部が白いが、養殖真鯛のそれは、下部が湾曲しているのが特徴。しかし、極く稀に例外もあると聞く。
 
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